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ライドシェア用輸送機械と電力貯蔵機としてのEV群の統合的運用

君塚 裕太

研究背景

 近年,EV(電気自動車)やカーシェアリングの普及が進んでいる.EVはガソリン車と比べ,充電時間や航続距離が問題となりやすい.しかし,EVを用いたカーシェアリングにおいては,短時間,短距離の利用が中心であると考えられるため,充電時間や航続距離は問題となりにくい.したがって,EVはカーシェアリングと相性が良く,今後はカーシェアリングにおいて,EVがより利用されることが考えられる.

 また,EVは移動手段としての輸送機械という役割だけではなく,車載の蓄電池を活用した電力の貯蔵機としての機能を持っている.PV(太陽光発電)などの再生可能エネルギーは環境によって発電量が不安定であり,ときに需要を超えて発電してしまうことがある.そこで,この需要を超えて発電してしまった電力を無駄なく活用するために,EVの車載の蓄電池を利用することが考えられている.

先行研究

 文献では,PVのある家庭や集合住宅において,EVを用いたエネルギーマネジメントシステムを提案し,EVを用いたエネルギーマネジメントにより電気料金の削減が可能であることが述べられている.文献では,EVシェアリングにおいて,ステーションにPVが取り付けられており,あらかじめPVの発電電力とEVシェアリングの利用予約が分かっている状況下で,PVの発電電力を考慮した最適なEVの充放電スケジュールと各EVの予約への割り当てを求めている.

研究目的

 今研究では,日中のある決められた時間帯において,PVによる電力の供給により,電力単価が割り引かれるという状況を考える.そして,その電力単価が割り引かれるという状況下において,収支とSoC(蓄電残量値)の関係を考察する.

問題設定

 1日を日中のEVをユーザに利用してもらう稼働時間と夜間の充電のみ行う充電時間とに分けて考える.日中の稼働時間のうち10:00から14:00の間において電力単価が割り引かれ,安く電力を購入し,EVを充電することができるという状況を考える.その状況の中で,EVシェアリングの1日の収支を最大とするような運用をする場合を考える.

主結果

 計算結果の一例として,EVの稼働開始時点のSoCと1日の収支の期待値の関係を表すグラフは以下のようになる.グラフより,1日の収支の期待値を最大とするような稼働開始時点のSoCは充電単価の割引がある場合と充電単価の割引がない場合とで比較すると,充電単価の割引がある場合の方がより小さいことがわかる. これは,稼働開始時点において,SoCを低い値にすることで,日中の電力単価が割り引かれている時間帯においてより多く充電することができるようになり,充電コストの低下によって,1日の収支の期待値がより大きくなるためであると考えられる.

縦軸が1日の収支の期待値,横軸が稼働開始時点でのSoCを表している.

今後の課題

 (1)電力単価の割り引かれる時間帯をあらかじめ決めて考えているが,現実の問題では,天候や季節など周囲の環境により,電力の需要や供給が変化するという点を考慮した上で,電力単価の設定をする必要がある.

 (2)EVとステーションの数を限定して簡単な場合について考えたが,より一般的な問題として,EV,ステーションが共に複数存在し,ステーションの位置関係を変化させた場合について考える必要がある.

参考文献

[1]上田知幸,孫 為華,柴田 直樹,伊藤 実.カーシェアリングに基づいたEVの効率的運用スケジューリング.マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2013)シンポジウム,2013.

[2]鈴木達也,稲垣伸吉,川島明彦,伊藤章,車載畜電池の利活用が拓く次世代エネルギー管理.計測と制御,第55巻, pp579-584, 2016.

[3]Akihiko Kawashima, Naoki Makino, Shinkichi Inagaki, Tatsuya Suzuki and Osamu Shimizu. Simultaneous Optimization of Assignment, Reallocation and Charging of Electric Vehicles in Sharing Services. 2017 IEEE Conference on Control Technology and Applications, 2017.

[4]川島明彦,稲垣伸吉,鈴木達也.EVシェアリングが担うエネルギー管理.計測と制御,第57巻, pp179-184, 2018.

[5]David J. Balding, Noel A. C. Cressie, Garret M. Fitzmaurice, Harvey Goldstein, Iain M. Johnstone, Geert Molenberghs, David W. Scott, Adrian F. M. Smith, Ruey S. Tsay and Sanford Weisberg. Approximate Dynamic Programming, pp57-65, 2011

[6]東京電力."料金プラン|電気料金プラン|東京電力エナジーバートナー株式会社". http://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/index-j.html.(参照 2019-08-26)

[7]日産."日産:リーフ LEAF|充電・航続距離".https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/leaf/charge.html. (参照 2019-08-26)

[8]タイムズカーシェア."利用料金|カーシェアリングのタイムズカーシェア". https://share.timescar.jp/fare/use.html. (参照 2019-08-26)

2020年 3月12日